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ケニアへ行って先ず驚いたのは、野生動物でもなく熱帯に雪化粧するキリマンジェロでもなく、ましてや広大なサバンナに沈む真っ赤な夕陽でもなかった。
それは、観光客が男性に比べて圧倒的に女性が多かったことである。
確かに、彼女たちも野生動物に感動し雄大な景観に感嘆の声をあげていた。しかし、これは私の勝手な推測であるが、彼女たちはアフリカに吸い寄せられてき たように思えた。
アフリカは人類発祥の地、すなわち“母なる大地”といわれている。ことによると、女性の体内には”彼の地への回帰”作用が働く何かが組み込まれているのかもしれない。

それはそれとして、観光客としてはマイノリティーである男性の私は、小さい頃からローレンツの本を読み今ではナショナル・ジオグラフィックを購読し、夢 にまで見ていた憧れのケニアへ行って来た。
サバンナ特有の低木と無数の草食動物。それを育む広大なサバンナ。私は水平線は見たことがあるが、地平線というもを見たのは初めてであった。

哲学者のように佇むヌー。全神経を肉食動物に集中しながら草を食べるインパラ。危険を通信し合っているかのようにシッポをアンテナの如く立てて走るイボイノシシ。
私は、天敵のいないライオンよりも、それら捕食者を常に意識しながら懸命に生きる彼等の方に興味を持った。
サファリカーが止まると、自分の鼓動が聞こえるほどの静寂が身を圧する。憧れの地だけに少し入れ込みすぎているかもしれないが、その静寂に包まれた空間に、補食される彼等だけが持っている鋭い嗅覚と視線が飛び交っているように感じた。

アンボセリから始まって主要な自然観光地を回りマサイマラで終わる行程であったが、ケニアを去る最後の日に自然は意外なプレゼントをしてくれた。それは、写真の如き虹である。
広大なマサイマラのサバンナの上に出来た、数千メートルに及ぶ半円形の虹。そのスケールの大きさには、いかにワイドレンズでも全体は収めることは出来な かった。

マサイマラの空港まで送ってくれたドライバーに、私は覚えたてのスワヒリ語で ni taruditana kenya(もう一度ケニアへ来ます)と言った。それは儀礼的な面もあったが、相当多くの本心が含まれていたことも事実である。
当初は余り積極的ではなかった妻も、どこか気が休まる処があったらしく「行って良かった」と言った。
それを聞き、妻もまた“彼の地への回帰”作用が働いたのかと思い、いっぱしの女性だったのだと私は妙に安心した。

ケニアは国民総生産などは低い国である。だが、ケニアの人達は巧みな日本語を駆使してガイドにドライバーに物売りにと、精力的な生活活動をしている。そして、なによりも大陸的な風土から来る明るさがいい。

アフリカへ行ってみて下さい。人生観が変わるとまでは言いませんが、数日間は携帯やパソコンから遠ざかりたい気持ちになることは請け合います。そして、 行くのはもちろんグローバルで。