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『文明の十字路トルコを旅して』
後藤 久美子様(北海道)
 


トプカプ宮殿宝物殿の
エメラルドの宝剣
 尖塔そびえるモスクにアラベスク、そしてコーランの響き、エキゾチックでムード溢れるイスタンブールは思った通り、歴史と文化に彩られた魅力ある街でした。
 その昔、中央アジアを故地とする遊牧の民が3大陸にまたがる一大イスラム国家を築き、東西の十字路として栄えたトルコには、古代都市ヒエラポリスや地中海文明のエフェス都市遺跡、石灰棚のパムッカレ 、世界遺産のギョレメ国立公園やカッパドキア岩窟群と、見どころが続き、特にカイマクルの地下都市には、ただただ驚嘆させられました。
 不思議な大自然の中に隠された事実、それは想像を絶するものでした。公開されている地下4階までには、居室や食料貯蔵庫、ワイン倉、貯水槽、教会、換気シャフトがあり、古代の技術でこれらを成し遂げた人々の知恵と力に改めて人間の偉大さを感じずにはいられませんでした。
 また、コンヤで見たイスラム教団の「メヴラーナの舞」とは、山高帽に麻の布(スーフ)のスカートをまとい、旋回しながら一心不乱に踊り続けるもので、何とも幻想的で宗教のもつ神秘さに触れた思いでした。
 そして、圧巻はトプカプ宮殿のオスマン帝国の至宝で、諸文化が交錯する“民族の回廊 ”に育まれたイスラム美術。
 その壮大な美の系譜を探りながらも私のお目当ては、世界最大のエメラルドを埋め込んだ、重さ3kmもあるスルタンの短剣で、18世紀にマフマト一世がイランのナーディル・シャーへの贈答品として作らせながらも、ナーディルの暗殺で一度もその手に渡ることなく、しかもイランの内乱で再びオスマンにもどされたという数奇な剣。今なおトプカプの名宝として燦然と輝いていました。
 かつてキャラバンがラクダに揺られて歩いたシルクロードを、21世紀に生きる私が歩けた幸せに感謝し、最後に、日本語の堪能さは無論、政治、経済、歴史とあらゆるジャンルに博学で、現地ガイドというよりは私共の良き先生であったグルセル氏。そして何より治安も良く、親日的で温かったトルコ国民とトルコに乾杯!