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『クロアチアの温かい雪』 |
古波蔵 保隆様・敦子様(沖縄県) |
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世界遺産プリトヴィチェ湖群国立公園の森林は、季節外れの雪で白一色に染まっていた。クロアチア人のガイド・トモさんは、遠来の私達に申し訳なさそうに天を仰いだ。
国の誇りである自然景観を是非見せたいとの熱い思いが、その表情から伝わった。渓谷へ下る決心をしたのであろう、細道を黙って歩き始めた。
静寂の林を抜け獣道を下り切った所で急に視界がひらけ、エメラ ルドグリーンの湖水が雪の白さと際立って、神秘なまでに鮮やかな光彩となって目に飛び込んできた。
「地底から噴出する炭酸カルシウムの濃度の高さが原因で、藻や苔が石灰華となり、湖水の美しさを醸し出している」 と、トモさんはツアーコンダクターを介して説明した。
真っ白い雪を頂く茶褐色の断崖絶壁から、幾筋にも重なり轟く瀑布。自然が創り出した水と森の造形美、急流・滝・淵にそれぞれ異なる「妖精」たちが、私達を如何に驚嘆させるかを策して創ったのであろうか、その壮観さに息をの
む思いで立ちつくした。
渓谷を流れるプリトヴィチェ川が世紀の時をいくつも越えて、何度も蛇行を繰り返しながら、高低差490メートルを生み、大小16個の湖と92個の滝が、まるで滝糸で結ばれた「中世の女王のネック
レス」のように各々の輝きを放っていた。
沖縄との気温差20度、初めて経験する白銀の世界。白い息を吐きながら寒さに耐えて握った拳が汗ばんだ。「プリトヴィチェを観るのに季節は問わない」。新緑の景観を期待し、雪の天空を見上げて嘆いたが、四季それぞれに独特の表情で迎えてくれる湖群に感謝した。
長い内戦の悲劇を越えて、自然環境・景観保護に努め「自由と平和」を希求し、力強く立ち上がるクロアチア国民の姿がオーバーラ
ップして熱きものがこみあげる。
中世の町並みを今に遺す城塞都市「ドブロヴニク」の城壁の上で交わした「フジヤマ・アリガト」 若者達のあいさつ。チトー元大統領の生誕の地「クロムベツ村」でバスが見えなくなるまで、大きく手を振って見送ってくれた小学生の純真な笑顔。
クロアチアの明るい未来を予感 し、「自然の豊かさと心の温かさ」さらに自国の歴史文化を誇り、直向きに新しい国造りに励む姿に胸うたれ、多くのことを学んだ旅だった。
これからも、時代を見据えたグローバルの斬新な企画に期待いたします。
(4月発の旅にご参加いただきました)
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